【本】クリティカルシンキング 入門篇(4)あなたがあなた自身を騙している
好評の(かどうかは知らない)このコーナー。本日は第4章です。
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前回はこちら。
第4章は「自分自身を省察する」。ちなみに先程から、「しょうさつ」で変換しようとして候補が出てこずイラッと来ていましたが正しくは「せいさつ」でした*1。ざっくり言うと、私達は自分自身を適切に省察できていなくて、「自分に起こることを都合よく歪めて解釈」し、「自分自身を都合よく歪めて見る」んですよというお話です。
自分に起こることを都合よく歪めて解釈する
認知的不協和理論
1つ目は社会心理学での有名な理論です。平たく言うと、「自分が取った行動や頑張りが無意味だったり間違っていたりした時のストレスを解消する方法は4通りから選ばれる」というものです。
- 行動を変化させる
- 認知を変化させる
- 新たな認知を付加する
- 接触する情報を選択し削減する
例えば、私には5歳の息子がいるのですが、ちょっと私の機嫌が悪い(眠い時か、時間に追われている時が多い)と、私が息子に大声を出してしまうことがあります。で、ネットで「子どもを大声で怒ると子どもの脳に悪影響がある」と言う情報を目にしました。
「確かにそうだ、息子も嫌だし自分も嫌だからやめよう、眠いときは気をつけなきゃ」というのが「行動を変化させる」。これは認知を無理に変化させないで済むので理想的なパターンですが、これが無理な場合他の3つの方法がとられます。
「認知を変化させる」は、「そんなに大声を出してないし、めったにそんなことはないし、人間だから仕方ない部分もあるよね」というように、「息子に大声を出した」こと自体の捉え方を変える。
「新たな認知を付加する」は、「そういう意見もあるかもしれないけど、怒られることは息子に対するしつけの意味もある。しつけは大事だと、教育研究家の○○さんも言っていた」みたいな。ネガティブ情報にポジティブ情報を乗っけて正当化する。
「接触する情報を選択し削減する」は、「ネットで子育ての話題とか見るからいけない」と都合が悪い情報を入って来なくする。
認知的不協和理論で有名なのはフェスティンガーとアロンソンという心理学者ですね。フェスティンガーの「予言がはずれるとき」という本は、本人がカルト教団の内部に潜入して行ったフィールドワークだそうで、いつかは読みたい(と思いながら読んでいない)。アロンソンは「入会儀礼効果」で知られていて、このお二方は師弟関係なのだそうです。
自分自身を都合よく歪めて見ている
アイデンティティを守るため、適応的に歪める
前回取り上げた自己高揚バイアスと自己防衛バイアス。あわせて自己奉仕バイアスと言いますが、これも自分自身を都合よく歪めて見る機能です。そのほうが適応的なのです。生き残る上で有利なのです。なにか悪いことがあった時に、自分のせいではない、今回は運が悪かった、と捉えたほうが、早く立ち直れます。いつまでも落ち込んでいるとマイナス影響が大きい。
「あなたはどれくらい社交的か」という質問に、上位1%に入ると答えた人が25%いた、という例が書籍内で取り上げられていますが、実情よりも楽観的に捉えたほうが生きていくのが楽なんでしょう。自分が持っている自分のイメージに合う情報は採用し、合わない情報は無視する。良い記憶は保持し、悪い記憶は忘れる。
*1:またクリティカルシンキング出来ていますよアピールですね
*2:先日、「自己責任論は正常性バイアスの働き」と他の方のブログにコメントしちゃったのですが、不正確でした、ごめんなさい。「自己責任論は公平世界仮説によるもの」で、バイアスとしては(正常性バイアスもなくはないかもしれませんが)外集団バイアスのほうが適切だった気がします。