なぜバレンタインデーにはチョコレートを贈るのか
今週のお題「チョコレート」かー。なんか書いてみますか。
はー、しかしバレンタインデーか。ガキの頃は憂鬱でした。運動苦手な肥満児が、自分の立ち位置を見せつけられるイベント。誰が好きになるかっつー話で。
誰だよこんなの始めたやつは。
モロゾフさんだそうで。
余計なことしや…おかげで社会人になって義理でチョコもらえるようになりました。ありがとうございます。お返し考えるの面倒くさくてほんとに嫌です。在宅だとチョコレートのこと気にしなくて良さそうでいいわー。
さて、モロゾフさんが始めた「バレンタインデーにはチョコレート」の風潮、完全に定着したわけですが、それはいったいどうしてなのかが気になりました。どこかが言い出したけど全然定着しなかったとかよくある話じゃないですか。
最初から盛り上がったわけではなかった…?
調べていたらこんな記事を見つけました。
おお、多湖輝さん…「頭の体操」にはお世話になりました(合掌)。なるほど、モロゾフさんが悪い(悪いのか?)のでもなさそうだ。1970年代に何が起こったのだろう。
広告や記事での変遷がまとめられています。1970年代頃になんか流行し始めている、というのが読み取れる資料ですね。60年代半ばに、それまで男女別なく愛する人に贈り物をする、という打ち出し方だったのが、女性から男性へ、という文脈になってきたということですか。たぶん男性が買わなかったんでしょうな。まあでも1960年代はあまり盛り上がっていない感じですねぇ。
「日本ではバレンタインデーは定着しない」。そんな判断がされかけたことも。流れを変えたのは、子どもたちだった。
1970年代に、小中学校、高校で、「女の子から男の子に告白できる日」としてバレンタインデーが盛り上がりはじめたのだ。その過熱っぷりは新聞記事にもなっているくらい。このときにはすでに、「バレンタインデー=チョコ」の図式ができていた。
ほほう、小中高校生の女子たちが流行らせたのか。そしてそれが80年代に一般女性に伝播した(もしくはその女子たちが大人になった)。小中高校生女子の間でバレンタインデーにチョコレートが流行った理由がポイントになるのでしょうか。
バレンタインは恋の呪術だった…?
先導したのは、少女雑誌である。1960年代はまた少女漫画が華開く時代でもあった。
私の周辺にかぎっても、1968年には、11歳の女子が男子にチョコをあげていた。
少女雑誌でそうすると恋が叶うと書いてあったから、だそうである。
なるほどー!腹落ち感がある。バレンタインデーにチョコレートをプレゼントして恋がうまくいった、という事例。そのときにばれないようにやると成功する、という神秘的な要素。これは流行りはじめそうだわ。サンプル数少なそうだしインタビューの手法とか気になるので鵜呑みにはできないけど。
おい少女漫画誌、どうしてくれんだ。
ちょっとだけ心理学的な観点から
こういう恋の秘術みたいなのは錯誤相関を利用していますね。秘術を信じたい側は、「チョコレートをプレゼントして恋がうまく行った」という事例だけカウントするでしょう。ばれたらダメというのも、失敗事例を隠す役に立ちます。事後、うまく行った事例はみんなに広めるでしょうが、失敗事例は恥ずかしいので公表しないでしょうし。一方、「チョコをあげるとうまくいく」という信念がポジティブな気分を与え、それが成功に繋がるのもあるかも。そんなこんなでチョコをあげる人が増えていき、最終的には「みんなチョコをあげているから…」という状態になっていく、ということになりそう。
意外に、研究されていた
今回興味深かったのは、バレンタインデーの日本での発祥や流行定着について、研究も行われているようだということです。まあそんなに数はヒットしないですが。
ハロウィンが研究対象ですが、少しバレンタインデーにも触れられています。ターゲットとしての女性、シンボルとしてのチョコレートへの絞り込みが功を奏した。なるほど。これまで見た内容を踏まえると、ターゲットが一度さらに「小中高校生女子」まで絞り込まれ、シーンも「告白」に特定されていたのが刺さったのかもなーとも思います。
1950年代後半には、女性から男性に愛を伝える日という認識は一部に定着しつつあった、という分析などなかなか興味深いです。惜しむらくは、ブームが爆発した1960年代以降が扱われているはずの、(2)が見つからないこと…
こちらはある論文で引用文献になっていたもの。レビューで「多くのトリビアを盛り込んだ」と書かれていて興味がわきます。が、読まなきゃいかん本が多いので、まあそのうちどこかで読めたら…
このエントリはこのへんで。バレンタインデーに興味はありませんでしたが、調べ始めるとおもしろいことがわかって勉強になりました。不二家ピーナッツチョコレートでも食べて一息いれようっと。