Mendokusai Lab.

仕事や自分に起こったことなど、気になったことを、メンドクサイ感じで書き殴るブログです。

今月の「精神科Q&A」2021年4月

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Dr林のこころと脳の相談室」、毎月5日は「精神科Q&A」更新の日です。私のように興味本位だとしても、精神疾患やその治療に関心を持つ人が一人でも増えるといいなという建前のもと、興味本位で今日もレビューします。

今月のピックアップ

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【4272】被害妄想がひどい認知症の母にどう接するべきか

では妄想の改善の見込みはありません。今後は悪化する一方でしょう。ご家族としてまずこのことをはっきり認識する必要があります。

質問者の「お医者とか薬はもうあきらめています。」という記述に対しての回答。「そこをなんとかしないことには解決しない」ものを「それは無理なので」と回避しようとしてしまうことは、様々な場面でよくある話。「今までのやり方ではだめだった、だから無理だ」だと思考停止してしまうので、「今までのやり方ではだめだったんだが、うまくいく方法をなんとかして見つけよう」という姿勢が必要なのでしょう。

【4278】統合失調症の再発を繰り返してきた妻

質問者の「精神病の人が薬漬けになって荒廃状態になった人も多いというような話を聞いて」に対しての回答が印象的です。

このような迷信もいまだにかなりの人が信じいるのが現状です。この迷信が払拭されない理由は複雑ですが、まず前提としての事実としておさえるべきことがいくつかあります。主要なものは次の3点です。

(1) 精神病(多くは統合失調症を指します)は慢性化し荒廃状態になることがありうる。
(2) 薬によって荒廃状態になることはまずあり得ない。
(3) 「薬漬け」という言葉は、過去において、入院患者を管理するため(つまり、興奮状態になったり暴力的になったりする患者を管理するため)、過剰に薬を投与して鎮静することが一部の精神科病院で常態化していたことを指したものである。それ以外の事例についてこの言葉を用いるのは適切とはいえない。

本当に「薬によって荒廃状態になることはまずありえない」のかは精査する必要があるかとは思います。ただ、身内もこのような印象を持っていて、そうすると私が精神的不調になったときに困る。どうしたもんか。

【4284】「ずっと寝ている自分」も統合され、「気持ちが安定する」とはどういう状態なのか、分かるようになりました。

2月のエントリで「先月のピックアップ」として取り上げた、解離性同一性障害の方からの続報です。以前も書いたとおり「性的虐待」を取り扱っているので、誰にでもおすすめはできないのですが、解離性同一性障害を理解する上で非常に参考になる報告なのではと思います。この方の、自身を分析的に捉えられる視点、それを記述できる力は本当に素晴らしく、感動的ですらあります。

なお、今月は性的虐待のテーマがいくつかあり、この4284は穏やかですが、ものによってはかなりキツイ(特に4285)ので、閲覧の際はご注意を。

【4295】統合失調症の妻を医療保護入院させることの是非

このケースはご家族の対応が不適切だったために統合失調症が悪化し、強制的な治療に踏み切らざるを得なくなるという場合の典型例となっていますので、経過を振り返ってみたいと思います。(「ご家族の対応が不適切だった」とはっきり言われることは質問者にとって不愉快なこととは思いますが、同じようなケースの発生を一例でも少なくするためとご理解ください。)

一言で言ってしまうと、無知は罪だなぁ…と思わされる。

あなたが決めてください。そういう難しい決断をしなければならない状況に今は追い込まれています。

なかなか厳しい回答ですが、そう言いつつも先生は背中を押してくださっているようにも思えます。

おわりに

精神科での治療はなかなか勇気がいるものだと思います。精神科のハードルの高さは、「薬漬けの恐怖」「周囲の目」などの他、「どこにいい病院があるのか、いい医師があるのかわからない」というところにもあるように思います。

このように書いている自分自身にも、いつ精神科の受診が必要な日が来るかはわかりません。本当に必要なときには躊躇なく診察を受けるべきだと私は思っています。いざという時に最善に近い選択肢を選べるよう、保健所などを通じて情報を集めることもしなければなぁ、と思いながら、今日はこのエントリを書いています。