Mendokusai Lab.

仕事や自分に起こったことなど、気になったことを、メンドクサイ感じで書き殴るブログです。

今月の「精神科Q&A」

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気づいたらもう8日になっていました。「Dr林のこころと脳の相談室」、毎月5日は「精神科Q&A」更新の日です。私のように興味本位だとしても、精神疾患やその治療に関心を持つ人が一人でも増えるといいなという建前のもと、興味本位で今日もレビューします。

今月のピックアップ

林先生のサイトポリシーに従い、各Q&Aへの直接リンクはしません。

【4247】虚言癖の知人に辟易しています

虚言癖の知人が自分をターゲットにすることをやめさせられないか、との相談。

(1) 虚言そのものがなくなる
(2) 虚言そのものは続いていても、質問者をターゲットにすることがなくなる

この二つのどちらかが必要ですが、現在のところ虚言の治療法はありませんので(1)は期待できません。

そうなのか。結構ショック。確かに、虚言そのものの治療法はまだないんでしょうね。

本人に治療の意思があり、パーソナリティ障害に起因する虚言で、主治医がパーソナリティ障害の治療に熟達している場合には、結果として改善される、っていうのはあるのかな。虚言については、コラム「林の奥」にある「美少女L、その他、の虚言」が詳しいので、興味がある方は読んでみてください。

【4249】精神疾患が疑われる賃貸契約者との付き合い方

質問者の見立てが適切だった。私は、双極性障害かパーソナリティ障害かなぁ、と思っていたのですが、林先生の見立ては質問者と同じく統合失調症疑い。確かに「長文の意味不明なメール」の下りは統合失調症っぽい。

そして、このQAでは、このケースでの質問者に推奨される行動として、「事実の明確な記録」と「限界設定」も提起されています。こういう実務家的なアドバイスも時々出てくるところが、「精神科Q&A」の興味深い部分です。

結びが印象的でしたので引用します。

「相手の人は精神病なのだから我慢してください」と求めるのは、ある程度までは正しいことですが、「我慢」といっても誰にでも限度というものがあります。その限度を超えて忍耐を求めることは、結局は、「そんな我慢を強いられるくらいなら、精神病の人とのつきあいは一切拒否する」という姿勢に繋がることになりかねず、結果としては精神病の人を排除することになるものです。

【4250】統合失調症ですが体重を減らしたい

著しい体重増加という副作用に悩む方の相談に答えつつ、ドクターショッピングへの警鐘もありましたので引用。

本人が求める治療をしてくれる医師を探し続け、ようやくそういう医師が見つかると、やっと良い医師に出逢えたと考える方が多いですが、それは大部分の場合間違いです。

【4258】祖母は統合失調症だと思うのですがもう治療はむずかしいでしょうか

高齢であることは、薬物療法において、若年者とは違った注意が必要ということは言えますが、「薬による治療はむずかしい」とは言えません。十分に薬物療法の効果が期待できます。

「精神科Q&A」では統合失調症患者が未治療で長年過ごしたケースも多く扱われていて、「劇的な改善は見込めない」的な回答が多かったので意外でした。単純な年齢ではなく、未治療期間の長さによるのかな。

【4259】一緒に死んでくれと妻を追いかけ回した70歳の知人

認知症疑いの方について。

なお、精神科Q&Aでは、症状だけに基づいて統合失調症であると断言する回答をすることがしばしばありますが、これはメールに書かれている情報が正しいと仮定し、かつ、それ以外には重要な情報はないと仮定しての回答です。実際の臨床場面であれば、たとえ症状は典型的な統合失調症であっても、他の脳の病気の検査が必要なことはしばしばあります。すなわち厳密には、「統合失調症の典型的な症状があり、他の脳の病気でないことが確認できたときに、統合失調症と診断できる」ということになります。

質問を読みながら「これは統合失調症だろう」など推測するのですが、つい決めつけてしまう部分があり、自戒を込めて引用。

【4267】母が浮気をしていると騒ぎ出した父

認知症疑いケース(今月のテーマは認知症だったのかな)、今月もっともツボったQA。

質問者は「浮気は事実でない」と判断されているようですが、本人(お母様)が「浮気は絶対していない」と言っていることは、浮気が事実か否かを判断する根拠としては薄弱です。実際に浮気をしている人の多くは「浮気は絶対していない」と主張するのが常だからです。

おわりに

林先生は2月に書籍を出版されています。
www.amazon.co.jp
まあまあいいお値段がするのと、やや本格的なようですぐポチるのはためらわれますが、見かけたら読んでみよう。

ところで監修の村松太郎先生ですが、村も松も木偏で、松の旁は公で、太郎は一…いえ、ただの妄想です。