エビングハウスの含意
メラビアンの法則
— 中原淳(なかはらじゅん) (@nakaharajun) 2024年3月18日
タックマンモデル
ラーニングピラミッド
これらのモデルが
企業研修で出てきたら
原典読みました?
それは証拠がありますか?
いつの時代のモデルですか?
と聞きましょう。
企業研修は「謎すぎる研修」が
少なくありません。
皆さんご存知立教大中原さんのポスト、今日拝見したのでちょっと乗っかりました。
エビングハウスの忘却曲線も追加してあげてください。
— なかつ (@h_nktz) 2026年1月3日
研修会社さんに「あなたたちは無意味綴りを記憶させてるんですか」とガチで問い詰めたい。 https://t.co/Z234HbEWRI
で、ちょうどいい話なので書き始めているうちに、結構話が広がって当初想定とは違うオチになったのが今日のエントリでございます。ご笑覧ください。
エビングハウスの忘却曲線とは
Wikipediaさんの解説。
このサイトはわかりやすくかつ極端な解釈をせずに書かれているように思います。特に「節約率」という指標がなぜ用いられているのか私もよくわかっていなかったのですが、そこが学べてありがたかったですね。とはいえ、解説を読んでわかった気にならずに、原典にあたるのが大事なので、思い込まずに原典にあたって主張したいなと思います(さっき図書館で予約しました)。
研修文脈での使われ方をレビュー
ここからはいくつかのウェブサイトを見ながら、「エビングハウスの忘却曲線」についての解説が適切であるか、そして主張に対して適切に使われているかを見ていきたいと思います。ぱらぱらと見ましたが、雑なところが多いよな、というのが私の印象です。今度ディープリサーチかけてみるかな。
エビングハウスの忘却曲線についての解説: 雑な気がします。 まず節約率とは何かを説明しているのは良いと思います。しかし示されているデータからは、時間経過に沿って節約率が徐々に減衰していく、つまり時間が開くと一度記憶したことを再度記憶することの効率が悪化する、ということしかわかりません。「一度覚えてから時間をおいて何度も繰り返し復習することで覚え直す時間が短くなり、記憶の定着につながる」ことはこの結果からは読み取れないのでは。エビングハウス実験には反復学習についてのエビデンスがあるようなのでそちらを持ってくればいいと思うんですが。
主張に対しての使い方: かなり怪しい。 「忘却曲線からも見るように、知識の定着には繰り返しが必要なことが分かります。」ということは言えないですよね。まず「忘却曲線からも見るように〜繰り返しが必要」は先程述べたように言えていないですよね。また、あくまで忘却曲線は「無意味単語」を用いての減衰曲線であり、「知識の定着」ではないはず、有意味単語であり文脈もある学習内容には単純には適用できないはずです。さらに、反復学習についてのエビデンスを用いれば「繰り返し方略は知識定着には有用」とは言えそうですが、「繰り返しが必要」とは言えないはずですよね。一撃でめっちゃインパクトがあれば覚えられるんで。
エビングハウスの忘却曲線についての解説: 正確さを意識している。 「意味のない単語を覚えようとした実験結果だということに注意が必要」「思い出すのにどれぐらい節約できたか曲線の方が正しい解釈」など、過度にデフォルメせずに丁寧に説明されていると感じます。
主張に対しての使い方: ある程度誠実ではあるけど… 「エビングハウスの忘却曲線は無意味な単語についての実験であったことから、意味のある(と思いたい)研修の内容にそのまま適応はできませんが、それでも、1日経てばかなりの部分を忘れていることは確かだと思います。」ということで、ある程度前提を踏まえた主張をしているようには思いますが、「かなりの部分を忘れていることは確か」とまでは言えないのではないかなぁ。主観ベースの反論ですみません。
実は研修の中身は無意味単語?
実はハートクエイク社の記事で「意味のある(と思いたい)研修の内容」ってところにちょっと共感しちゃったんですよね。
私は冒頭のとおり、もともと「エビングハウスの忘却曲線を研修の理由付けに使うな!」とプリプリ怒っていたんです。無意味単語を覚えさせてるんじゃないんでしょ、円周率ひたすら暗証させてるのと違うんでしょ、反復学習が大事みたいな安直なアップセルを提供してるんじゃないよ、もっと「納得できて理解できて使える」ようなことを提供しようよ、って言いたい。
だけど今日このブログを書き始めて考えたことがありました。
voicyで安斎勇樹さんが「わかりやすく話す」ための前提を話していて、その中に学習者に対する見立ての話があります。
学習者は抽象的な概念を普通は理解できない。集中力が全然ない。眠い。抽象1に具体3ぐらいないとわからない。さっき言った抽象定義を5分後に忘れる。そのわりにわかったつもりになる。そういう前提を持って同じことを繰り返し話すんだ、というお話。このvoicyを年末に聴いてて、これほんとそうだよなー、って思ってたんですけどね。
このブログエントリを書き始めて、実は抽象概念だったり、あるいは研修で伝えている内容って、受講者にとっては無意味単語なんじゃないかって思ったんですよね。しかも、自分自身の体験知識とも紐付かない無関係単語。それを一日の研修で必死に叩き込む。ここでいう叩き込むは「丸暗記しろ」みたいなやつです。そのうえで反復学習させる。そういう方法論に研修業者が自分たちを限定してしまっているのでは?
そういう意味で、実は「エビングハウスの忘却曲線」を使って反復学習の有効性を主張しているのは実は逆説的に適切なのかもしれないな、なんてことを考えたのでした。
まあちなみにうちの会社のE-Learningコンテンツにもエビングハウスの忘却曲線が出てきてたんで現在厳重抗議中なんですけどね。せめて自分は誠実にデータを使いながら、誠実に論理づけて、学習者にとって有意味な学習コンテンツを提供していきたいなと思っています。
反復学習は反復学習で別の意味で大事だと思ってるんですが、それ書き始めると終わらないでいずれそのうちに。